甘露丸のチョコレート・スタジアム

オープニング

「壱番世界ではこの時期にチョコレートを食すと聞いた。そういう習慣なのであろう？」
　甘露丸はそう言った。
　幾多の異世界から来たものたちが集うターミナル。住人たちの習慣や文化はさまざまである。しかし世界図書館がその起源にもとづいて壱番世界式の生活習慣を基本としている関係で、壱番世界のものごとが多く流入していることは確かだ。
　特に、コンダクターは覚醒後も壱番世界と０世界を往復できる。
　だから案外、ターミナルでは壱番世界の最新の流行が取り入れられていたりもするのである。

「習慣というか……」
　チョコレート会社の陰謀じゃないか、という言葉を飛田アリオは呑み込む。
　なんだかそれも夢のないことのように思われた。
　バレンタインデイに盛り上がっているのは壱番世界でもごく一部だとは思うが……。

「そこで良いことを思いついた。お嬢様はインヤンガイに旅行中じゃが、ご帰還に合わせて最高のチョコレート菓子を用意しようと思う。そちらもお菓子作りに参加してみぬか？　ターミナルの店々は壱番世界の流行には敏感なところも多い。お嬢様はチョコレートがお好きじゃ。ターミナル中を甘い香りにしてお嬢様をお迎えしようではないか」
　そう言って、甘露丸はロストナンバーたちを世界図書館の厨房に呼び集める。
　普段は職員たちの食事を作るための厨房に、今日ばかりは山ほどのチョコレートと、お菓子作りの道具が積み上げられているのだった。

ご案内

甘露丸の発案で、皆でチョコレート菓子を作ります。できあがったお菓子の中から優秀作を決めるという催しもあるようです。

このイベントは期間限定のイベント掲示板として運営されます。

※時系列や整合性などはあまり気にせず、『巡節祭』シナリオ参加中のキャラクターでもご参加下さい。

→チョコレート作りの様子はこちら！（過去ログ）

■チョコレート完成！
参加者たちにより、以下のようなチョコレート菓子が完成しました。
（詳細や制作風景は作品名をクリックして下さい）

この中から投票により優秀作を選ぶことになりました。その結果は……

優秀作品

　ずらりと揃った２４の作品はいずれも力作だった。
　甘い匂いのただよう世界図書館の厨房で、甘露丸と参加者は試食をしたり観察したりして、互いに品評し合う。話を聞きつけて集まってきたものたちもいた。
　正統派の菓子類から、ユニークなアイデアの創作菓子、そしてツーリストたちがおのれの能力を生かしてつくった不思議なものまで……。それぞれに魅力的であるためか、票は分かれたようである。

　日奈香美 有栖たちのつくったイタリアンメレンゲのショコラムースはかなり本格的な作品で、仕上がりもバレンタインのチョコレートにはふさわしいという声があがった。
　百瀬 桔紗と七篠 権兵衛がロールケーキでロストレイルを表現した作品は、子どもにも人気。食べるのがもったいないというものもいた。
　春秋冬夏の作品は、食べてみるまで中身の味がわからないところが面白いという声が多く、その味も申し分ないことで人気があった。

　制作中から話題を集めていたのが、早乙女アキラの――もとい、彼のセクタン、セク次郎が作ったクッキーである。
「セクタンが作ったっていうのがすごいよ」
　佐川 疾風が感心して言った。
「沢山あるのが、みんなで分けられてとても良いと思う……。ちゃんと、色も味もフォーム別に分かれているし。見ていて楽しいよ」
「一生懸命に作っとったしなぁ。わいもおこぼれに預からせてもろうたし。お礼に一票入れるわ」
　と、森山 天童。

　制作のテーブルがひときわ騒がしかったのは冷泉　律たちの作品も同じだろう。
　しかし出来上がったセクタンチョコクッキーとターミナル風白黒チョコまんはなかなかの出来栄え。
「『旅の最中にそれを見るとターミナルを思い出すようなチョコ』っていうことで、作られたと聞きました」
　レヴィ・エルウッドは言った。
「『０世界がツーリストにとって第二の故郷になれば』という優しさが伝わってくる気がします」

「むう……。どれも捨てがたいが、票がいちばん多いのはこれかのう……」
　と、甘露丸。

「実に見事です」
　リィリアの感嘆のまなざし。
「なんという繊細な技……。俺の作品の中に混ぜたいくらいだ」
　そう言ったのは、さまざまな異世界の食材でそれぞれを象徴する作品をつくったグラン・リーフガルダ。なるほど、その中にこれがあれば、それはそれで映えるだろう。
「自信作だからな！」
　ツヴァイがその作品――、チョコレートで作ったミニチュア・アリッサを前に、胸を張った。

「よし、本日の優秀作はこの作品とする！」
　甘露丸が宣言し、ギャラリーから拍手が起こった。
「うーん、でも他にも可愛いのも美味しいのもいっぱいあったのに～」
　日和坂 綾が未練がましく言った。一票に絞るのに相当悩んだらしい。
「せっかくみんな作ったんだよ！」
「確かに……。試食会だけで終わらすのも勿体ないのぅ。……よしわかった。この優秀作は、優秀作としておすすめするが、残りのものもお嬢様には紹介してお言葉はいただくことにするぞ」
　おお、と作り手たちから声があがった。
　烏丸 明良がいやに熱のこもったガッツポーズをした。
　ともあれ、チョコづくり大会と品評会はいったん幕引きとなる。
　あとは、アリッサの帰りを待つばかりだ――。

●最優秀作品（もっとも人気が高かったもの）
ツヴァイ作：チョコレートで作ったミニチュア・アリッサ

●優秀作品（次に人気が高かったもの）
早乙女アキラ（のセクタン）作：セクタンクッキー
冷泉 律作：セクタンチョコクッキー、ターミナル風白黒チョコまん

●その他の人気作
日奈香美 有栖作：イタリアンメレンゲのショコラムース
百瀬 桔紗と七篠 権兵衛作：くるくるチョコっとレイル
春秋冬夏作：どちらが抹茶ケーキ？オレンジケーキ？&ターミナル風パウンドケーキ！

→アリッサの試食の様子はこちら！