魂に問う
オープニング
壱番世界でのトレインウォーを終え、水瓶座号で大勢のロストナンバーたちが帰還する。
そのなかに、ラス・アイシュメルの姿もあった。
「お疲れ様。えっと……だいじょうぶ?」
図書館ホールで彼を出迎えたアリッサが戸惑い気味に声をかける。
「問題ありません」
「鼻血が止まらないらしいよ」
ラスは言ったが、エミリエが心配そうに言い添える。
「脳に高負荷がかかり続けているせいだろう。血圧が異常だ」
クゥ・レーヌが言った。
「それよりも、この『魂』をどうにかしなければ。急速に崩壊がはじまっています。なんとか維持していますがこのままでは」
「それを止める方法はないと思うわ。それができれば、ダイアナおばあさまはあんな計画を巡らせる必要なんてなかった。『虚無の詩篇』から復元したディラックの魂を安定させるためには、適合する肉体が必要なの」
「なら今のうちに、この魂から情報を引き出すべきでしょう。ディラックは自力で消失の運命を免れた唯一の事例。ほかにも解明したいことはたくさんあります」
錬金術師ディラックは自身を『真理へと至るもの』と語った。
『赤の王』を通じて、アーカイヴの情報にアクセスした可能性もあり、さまざまな情報・知識を蓄えているのではないかと思われる。ラスの言うとおり、その知識を引き出して有効活用すべきだろう。
アリッサはラスへ頷いた、が――
「……っ。ごめんなさい」
真顔のラスが、両の鼻の穴にティッシュを詰めていたので噴かざるをえなかった。
「アリッサ、アウトーーー」
エミリエが告げた。
ご案内
トレインウォーにおいて、ラス・アイシュメルさんは「錬金術師ディラックの魂」の捕獲に成功しました。しかし、この魂をこのまま維持・保存することは不可能なようです。
そこで、完全な消失までに、できるかぎりの情報収集を試みます。ラスさんを媒介に、ディラックの魂に質問を行うことで、回答を引き出すことができます。すでに「ディラックの感情」は失われているため、機械的に質問の回答だけを取り出せるでしょう。
■参加方法
(プレイング受付は終了しました)
ルール |
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集まった質問と回答
質問者:ジュリエッタ・凛・アヴェルリーノ(cppx6659) ディラックの落とし子に属するチャイ=ブレが万一消滅した場合、彼の力を借りて記憶を差し出す代わりに肉体を維持しているロストメモリー達はどうなってしまうのか? |
回答: 変化はない。0世界の住人として在り続けるであろう。 |
質問者:イルファーン(ccvn5011) 僕が聞きたい事はひとつ。 『因果律の外の路線』の果て《ワールズエンド・ステーション》とは何だい? そこへ辿り着けばツーリストの故郷も見つかるそうだが…… |
回答: すべての世界群が設計され、生み出された、一切の始まりの場所である。ワールズエンド・ステーションの世界計ならば、すべての世界群を示すことができよう。 |
質問者:ネモ伯爵(cuft5882) ワシの質問は至極単純明快じゃ チャイ=ブレを殺す方法はあるのかの? あるなら教えてたもれ |
回答: イグシストは不滅であり、不滅であるがゆえにイグシストである。 しかし、絶え間なく殺し続けることができれば、実質的には殺せるだろう。 |
質問者:NAD(cuyz3704) はじめまして私はNAD、ああバーバルコミュニケーションはできないので思い浮かべてくれ 私が聞きたいのは君の情報を維持する方法だ 図書館連中はできないと考えたようだが、アーカイブとやらを覗いた君は違う情報をもっているのではないかな? 私からは、君の魂から情報を細分化して取り出し複数の魂に植え付ける方法を提案するよ 君の情報があれば私の食事事情がもっと改善される気がするんだ是非に頼むよ |
回答: 不可能である。 |
質問者:鍛丸(csxu8904) おんしは壱番世界で はじめて真理に達した人間だったという話を聞いた。 普通ならば何かと契約しない限り、 消失してしまうのはよく知られていることじゃ。 現に儂らも間接的にチャイ=ブレと契約して消失を免れておる。 普通に考えればおんしが錬金術師であろう修道士であろうが ワームでもない限り個人の力では消失を逃れられるとは考えにくい。 おんしは何と契約したんじゃ? 何と契約して消失を免れたのじゃ? |
回答: チャイ=ブレである。 『虚無の詩篇』のしくみはパスホルダーの原型となったものであるゆえ。 |
質問者:同田 鋼太郎(chnf3216) 錬金術って、アレですよね。鉛を金に変えるっていうアレですよね。 物質編成とか凄いと思います。 だけど、金を沢山作ってリッチになりたいとは思わないんですよねぇ。 いや、金自体は大好きですけど!もういっぱいナデナデしてハスハスしちゃいたいですけ どっ! ところで物質編成できるなら、最強の金属とか余裕で作れるんじゃないでしょうか! という事で質問します。 アナタが知っている最高傑作な金属の生成法を教えて頂けますか? |
回答: (「オリハルコン」の生成法の情報を得た) |
質問者:ジャック・ハート(cbzs7269) ディラック。 お前の目指した更なる高みッてェ場所なら、どんな望みも叶うのかッ!? 望む人間をロストナンバーにし、消失の運命にはさらさせずに他の世界に移動させる…そんな望みは叶うのかッ!? 教えろ、教えてくれ、ディラック!! |
回答: カンダータにおいて学ぶが良い。 |
質問者:川原 撫子(cuee7619) はーい、質問ですぅ☆ 貴方は真理に至るものになって新しい世界へ旅立つって言ってましたけどぉ、貴方の目指した場所には他の方法では行けないんでしょぉかぁ? 冒険者(見習い)として新しい世界に行けるのはとっても魅力的ですけどぉ、壱番世界滅ぼしてしか行けないとか言われると困っちゃいますぅ☆ 知ってる他の方法、というか思いつく他の方法全部教えて下さいぃ☆ |
回答: 質問の意味が不明である。 私の目的と壱番世界の滅亡に直接の因果関係はない。 |
質問者:リーリス・キャロン(chse2070) もしもあなたが望む通りの存在になって望み通りの場所に行けていたとしたら。 ディラックおじちゃん、おじちゃんは新たに何ができるようになっていたのかな? 教えてくれる、ディラックおじちゃん? |
回答: すべての世界群を把握し、また、新たな世界を創造できていたであろう。 |
質問者:ティリクティア(curp9866) ヘンリーは例外として、貴方の魂に適合する肉体を持つ者がベイフルック、エルトダウン 家の血を引く者達であったのはどうして?詳しく理由を教えて。 |
回答: ダイアナ・ベイフルックが一族のものに『虚無の詩篇』をよく読ませていたからである。 |
質問者:坂上 健(czzp3547) 俺は壱番世界の人間だから、知りたいことは1つだけだ。 他の全ての世界に迷惑をかけず、最終的には壱番世界も滅ぼしっ放しにしないで、チャイ=ブレの持つ力を全て失わせる方法。 どんな方法でも可能性でもいい、思いつく限りのことを教えてくれ。 |
回答: 思いつかない。イグシストは不滅であるので。 |
質問者:ラス・アイシュメル(cbvh3637) 私の聞きたいことは一つ。 「消失の運命」を私だけの力で引き起す方法を教えろ。 私だけでは無理なら、私ならば何をどうすれば可能となるのかを示せ。 誰の真理数であろうと自由に奪い、消失させることのできる手段。 似た事例を上げれば世界群の一つ、カンダータに存在するタグ・ブレイクの技術だ。 さあ、答えろよ!ボクはそれが知りたいんだ! |
回答: カンダータの方法を除けば、チャイ=ブレから力を授かればよいであろう。 あるいは自身がイグシストになれば良い。 |
質問者:三ツ屋 緑郎(ctwx8735) 貴方より以前にチャイブレと共に居たアーカイブの民っていう存在が居たらしいんだけど、それらしい物の手掛かりとか心当たり無いかな? |
回答: チャイ=ブレがひとつ前に吸収した世界の残滓であろう。 |
質問者:ツィーダ(cpmc4617) 「『因果律の外の路線』を走るために必要な航路データを教えてくれないかな?」 得られた航路データは、ボクのメモリーにしっかり記憶しておこう。 それが理解不能なデータでも、1ビットも残さず、音声データとして、あるいは文字データとして…記憶しておこう。 |
回答: (そのための情報を得た) |
質問者:ルイス・ヴォルフ(csxe4272) 最近、(未来にいるかもしれない)夫の帰りが遅いんです、浮気してないか心配なんです。どうして帰りが遅いか教えて下さい! もう覚悟はできています、どんな残酷な答えだろうと構いません! 真実を教えてください!! いざとなれば、子供と2人だけでも生きてみせますから! |
回答: 浮気をしている夫と浮気をしていない夫は、事実が観測されるまで両方が同時に存在している。 |
質問者:ヘータ(chxm4071) ワタシがアーカイヴにある情報を知るにはどうすればいいのかな。 アーカイヴには情報が多いらしいけど、まだワタシは知れてないんだよね。 |
回答: チャイ=ブレに願い出れば良い。 |
質問者:シーアールシー ゼロ(czzf6499) 「少なくともディラックさんとダイアナさんは実際に魔法を使えたのです。 なのに、壱番世界では魔法が空想上のものとされていたのは何故なのです?」 |
回答: 大勢の壱番世界人がその実在を信じなかったためである。 |
質問者:ヴェンニフ 隆樹(cxds1507) 質問内容: 世界樹を完全に滅ぼす方法を教えろ。 |
回答: イグシストは不滅であり、不滅であるがゆえにイグシストである。 しかし、絶え間なく殺し続けることができれば、実質的には殺せるだろう。 |
質問者:華月(cade5246) 貴方はどうやって消失の運命から免れたの? |
回答: 術式によりチャイ=ブレの力を引き出し、自身の存在を分解して、一度、私でなくなることで「消失する私」ではなくなった。 |
質問者:虎部 隆(cuxx6990) 俺はダイアナの魔法であんたの過去を見てきた。ベアトリスに近づき混乱に乗じて本を奪った過去をな。 真理を求めるあんたの姿が気になった。当時あんたは虚無の詩篇もディラックの空も知らない。 一体何を見てあそこまで真理を追い求めていたんだ? ■質問「真理を求めて修道士から錬金術師になり自らを本に記憶させたその理由を教えてくれ」 俺にはダイアナを止めなかったあんたが壱番世界の滅びを防ごうとしてた様には見えねーんだ。 |
回答: 世界計の夢を見たからである。 |
質問者:ふさふさ(ccvy5904) (∪^ω^)わんお! わんお! わぁふ! わぁふ! (『虚無の詩篇』の観測者はディラックの落とし子だったから消滅を回避できたのでは無いのか?) |
回答: 「『虚無の詩篇』の観測者」とは何か。質問の意味が不明である。 |
質問者:マスカダイン・F・ 羽空 (cntd1431) ボクら ひいては世界から放逐されたロストナンバーが 消失の運命を免れる、その存在を持続させる為の「具体的」な「情報量」ってなにかな? ディラックさんは書物の「情報」によりちょっとは蘇った、自分の存在を残したのね。 今のボクらみたいに…肉体、記憶、心全部含め 完全の一人分の存在を世界に繋ぎ止めて いる 情報ってどれだけのものなんだろ? …イグジストなんて超存在だけじゃなくボクらにも 再現出来るレベルのものかな? |
回答: 21グラムである。 |
質問者:ルーズーイイラ(cctv4934) 君が「錬金術師ディラック」なのは間違いないと思うけど『虚無の詩篇』を書いたのは一体誰?本当に「錬金術師ディラック」かい? |
回答: 私、ディラックである。 |
質問者:虚空(cudz6872) 魔法やら超能力が使える異世界人が壱番世界に再帰属した場合、そういう『本来なら壱番世界にはない』能力はどうなる? |
回答: 保持される。帰属により本来の力を失うことはない。 |
質問者:冷泉 律(cczu5385) 壱番世界に帰属したいと考えているコンダクターの帰属方法を教えてください。 私は壱番世界で生活しつつロストナンバーとして活動しています。 壱番世界との繋がりは深いと思っています。 もしかして、自分でそう思っているだけという切ない事態なのかもしれないんですけど。 |
回答: 特別な違いはない。 世界群によって帰属率に有意な差はないはずである。 |
質問者:ブレイク・エルスノール(cybt3247) ディラックの落とし子って、結局どういう存在なんですか? |
回答: いずれの世界群にも帰属しない、虚無より生まれし存在である。それ以上でも以下でもない。 |
質問者:クロウ・ハーベスト(cztz6189) ……そうだな、ディラックの落とし子について教えてくれ。あいつらは、どうして生まれるんだ? |
回答: 虚無の中で一定の情報塊が存在としてのふるまいをはじめたとき、それが落とし子と認識される。 それは摂理であるため理由を問うことはできない。 |
質問者:ハクア・クロスフォード(cxxr7037) アーカイヴ遺跡を建造したのは、どのような者達だ? |
回答: チャイ=ブレがひとつ前に吸収した世界の住人であろう。 |
質問者:金町 洋(csvy9267) 初めましてにに当然なるんだけども。聞きたいこたぁストレートですよ。壱番世界の滅びの運命を回避する方法、あなたが生前立てた仮説か心当たりはないですか?具体的に教えてください。 |
回答: チャイ=ブレが別の世界をプラットホームに定めればよい。 |
質問者:テリガン・ウルグナズ(cdnb2275) 世界計の破片が叶えられる願いって、どの辺まで叶えられるの? 世界を生み出したり、生命を生み出したりは出来る? |
回答: 世界計はそれが存在する世界のしくみを体現するもの。その世界において可能なことは可能になるであろう。 |
質問者:一一 一(cexe9619) 貴方は自身の知識欲故に、探究心故に真理に辿り着いたと聞きました。 ……そもそも、貴方は何故、全てを知りたいと願うようになったんですか? |
回答: 欲望に理由などない。 |
質問者:司馬 ユキノ(ccyp7493) チャイ=ブレがいつか目覚めて壱番世界を吸収するというのは、もう絶対に変えられない未来なんでしょうか……? 壱番世界のプラットホーム化を解く方法は何かないんですか? |
回答: 絶対ではない。 チャイ=ブレが別の世界をプラットホームに定めることもありえないとは言えない。 |
質問者:ソア・ヒタネ(cwed3922) この0世界はいろんな他の世界と繋がっているけど、それでも、わたしやたくさんの皆さんの故郷……元々いた世界は、ほとんど見つかっていません。 どうすれば見つけることができますか? |
回答: ワールズエンド・ステーションの世界計ならば、すべての世界群を示すことができよう。 |
「報告は以上です」
司書から提出された報告書に目を通し、アリッサは考え込む素振りを見せた。
「ツィーダさんが取得した情報は貴重なものだわ。今まで、理論的にはその存在が仮定されていたけれど、誰も到達したことがないはずの、世界群の果てへ行くことができる」
「まだ計算中ですが、現状のロストレイルでは……」
「現状ならね」
「……! まさか――」
「建造中のロストレイル13号なら可能性はあるわ。条件は3つあったの。ひとつめは、『ワールズエンドステーション』の位置情報。ふたつめは『現状のロストレイルを凌駕する高出力の世界間移動鉄道』、そして最後にもうひとつ――『因果律の外の路線』に入るための『流転機関』の入手よ。条件は揃いつつあるわ」
ディラックが目指したという大いなる真理――。
それは、ロストナンバーたちの新たな旅の予感をもたらすものであった。