館長のゆくえは?
~ターミナル、世界図書館・館長室~
その日、館長室のアリッサのもとへ、3人の世界司書が集った。
ウィリアム執事が淹れた紅茶で喉をうるおすと、アリッサが報告を促す。
アリッサは、カンダータに残されていた館長の所持品……、特に上着のポケットに入っていた手紙と、スーツケースから見つけたお守り石のようなものに関心を示し、調べさせていたのである。
「これはブルーインブルーの文字だ」
まず口を開いたのはシド・ビスターク。件の手紙のことがわかったらしい。
「ブルーインブルーで出された書簡ということね?」
「封緘の蜜蝋の跡があるが、この印、それから署名から差出人は……アレン・アーク――『奇譚卿』だよ」
「それって、このまえの!」
『奇譚卿』と呼ばれる謎の人物。
それは先日、ジャンクヘヴンを通じてロストナンバーたちに怪談の蒐集を依頼したブルーインブルーの領主ではないか。
「つまり『奇譚卿』からおじさま宛の手紙ってことね?」
「そうなるな。内容は――
貴殿の問い合わせに心当たりあり
当方にて紹介状を書くことは可能
ご都合よければ来られたし
……だとさ」
「おじさまが『奇譚卿』に誰かを紹介してくれるように頼んだということね。この手紙を受け取って、そしておじさまは『奇譚卿』に会いに行ったのかしら……」
アリッサはすこし考え込んだが、今の段階でその結論は手に入らない。
「エミリエのほうもわかったよ! このお守り石ね」
自分の発見を話したくてたまらなかったという様子で、エミリエは口を開いた。
「スーツケースの中の貨幣のいくつかはヴォロスのだったんだ。だからこれもヴォロスのものかな?って思って調べてみたの。そしたらね、これはルルカ石っていう、ヴォロスの南方でしか採れない石だってわかったの。キャラバンの路の南の終点、『交易都市マーバ』ってところに行けば、これと同じようなものが手に入ると思う」
「おじさまがそこで買ったのかしら」
「それだけじゃないんだ」
エミリエは得意げに、えへへと笑った。
「この石に刻まれていたのはヴォロスの古い呪術文字だよ。しかも、これを使っているのは、ドラグレット族だけなんだって!」
「ドラグレット族って?」
「ドラゴンの血を引いているっていう種族みたい。交易都市マーバの南、『パーリアの樹海』っていう密林の奥に住んでいるらしいけど、ヴォロスの人でも会った人はほとんどいないの」
「おじさまはドラグレット族からこのお守り石を手に入れた可能性があるわけね」
徐々に判明する情報のピースを、頭の中で組み立てるように、アリッサは虚空に視線を投げた。
「私からいいでしょうか」
カンダータ訪問団の代表を務めたリベル・セヴァンが発言する。
「カンダータ訪問団の結果は、館長のゆくえをほぼ同定したと言っていいと思います。カンダータに不時着したロストレイル0号機は同地に残されたままでした。そして館長はスレッドライナーによってインヤンガイへ渡ったあと、カンダータ軍の所属から逃れて出奔しています。これらの事実から導かれる結論はひとつです」
リベルはきっぱりと言った。
「館長はインヤンガイにいるということです」
「……そうね。そう考えるのは自然だわ。世界間鉄道を利用せずに世界群を渡る方法がなければだけど」
「その可能性はいったん除外すべきではないでしょうか。白いカラスを探すより、まず目の前の可能性から探っていくべきでは。探偵のネットワークを使って、しらみつぶしの捜査を行いましょう」
リベルの提案に反対するものはいなかった。
「じゃあリベルはインヤンガイの調査の準備をして。……それと……私はヴォロスやブルーインブルーでの、おじさまの足取りについても、調べておくべきだと思うの」
アリッサは言った。
「えー、でも、インヤンガイで館長が見つかるんだったらそれでよくない? あとで館長から聞けばいいんだよ」
エミリエは無邪気に言ったが、シドはアリッサの思惑を察したようだった。
「館長の行動には謎が多い。それを確かめたほうがいいってことだな」
「……なにか意味があるはずなの。きっとなにか大きな意味が」
エドマンドの旅の目的は何だったのか。
ヴォロスとブルーインブルーで何をしたのか。アリッサはそれを知るべきだという。
「ふたつの手がかりがあるわ。『奇譚卿の手紙』と『ドラグレット族の守り石』。これをとっかかりに、それぞれの世界で調査をするチームを派遣しましょう」
インヤンガイでの大捜索。
ヴォロスとブルーインブルーへの調査隊派遣。
世界図書館から、それぞれの活動の協力者を募る声明が出されることになった。
■インヤンガイ大捜査線
「館長は今もインヤンガイにいるのか……?」、この推測を裏付ける手がかりを求めて、世界図書館はインヤンガイの探偵たちに徹底的な情報収集を依頼しました。探偵たちから、インヤンガイで起きているあやしい事件や、館長に関係あるかもしれない情報が集まり始めます……。
『インヤンガイ大捜査線』はイベントシナリオ群として運営されました。
→『インヤンガイ大捜査線』へ
■ヴォロス特命派遣隊
ブラン・カスターシェン おまえたち! そんなわけで、ヴォロスに行こうじゃないか。ドラゴンの末裔の種族……いったいどんなやつらなんだろうな? |
ヴォロス南方へ調査隊を派遣します。目的は、古代種族ドラグレットに会い、『ドラグレット族の守り石』と館長の関係を確かめること。しかしドラグレット族は樹海の奥深くに隠れ住むとされ、道なき道を行く波乱万丈の旅が予測されます。
→→→部隊が結成されました!
■ブルーインブルー特命派遣隊
飛田 アリオ 夏休みも終わりだけど、こんな機会めったになさそうだしさ。俺はブルーインブルーに行くことにする。一緒に行ってみないか!? |
ブルーインブルーへ調査隊を派遣します。目的は、『奇譚卿』に会い、手紙の真意と館長に紹介した人物の情報を得ること。そして卿の紹介で館長が会ったと思われる人物を求めて、謎解きの航海が行われます。果たして館長の目的とは?
→→→部隊が結成されました!