世界樹調査隊
オープニング
「お招きありがとうございます、リオードル公」
「こちらこそご足労に痛みいる」
「それで、ご相談と言うのは」
ナラゴニアの一画に建つ《人狼公》リオードルの城。
茶会の招待という体で招かれたアリッサがアフタヌーンティーのテーブルに就くと、リオードルは話し始めた。
「うむ。……先般、世界図書館ではイグシストの体内探索を行ったと聞く」
「ええ」
「休眠中のイグシストの体内から資材を得るという発想はなかったが、可能性を感じる。……『世界樹』に対しても、同じことを試みようかと思っている」
「まァ」
「そこでだ。探索は俺自身が指揮を執り、調査隊を組織する。隊員は世界図書館のロストナンバーで構成したい」
「なぜでしょう。ナラゴニアの方では問題が?」
「ある。まず第一に、ナラゴニアのものは世界樹への畏敬の念を忘れていない。恐ろしがって手を挙げるものは少なかろう。第二に、それでもなお俺に忠誠を誓う配下はいる。だがこのものたちはナラゴニアを守ってもらう必要がある。俺の不在時によからぬことを企む輩いるかもしれんからな。……それに、だ」
リオードルはにやりと笑った。
「ナラゴニアのものだけで部隊を組織することは、世界図書館にとっては不審や不安の種となるだろう。得られた成果をわれらが秘匿し、反乱の機を待たないとも限らない。」
「……」
「図書館のイグシスト探索は、目指した成果を得られなかった。そう聞いている」
「よくご存じなんですね」
「チャイ=ブレと世界樹は異なるが、同じ性質も備えている。図書館の探し物は世界樹の中でも見つかるやもしれん。その場合、得られたものは差上げよう。手を貸してもらう報酬だ」
「……。公の本当の目的は?」
アリッサは少し考え、ティーカップに口をつけた。そして発した問いに、リオードルは答えた。
「力だ」
「力……」
「俺はナラゴニアを支配し、王になるつもりだ。だがまだそれだけの力がない。世界樹を御すことができれば、それも達成できよう」
悪びれもせず、《人狼公》は言い放った。
* * *
「まさか受けたのではないでしょうね」
レディ・カリスがきッと目尻を吊り上げるのに対して、アリッサは唇を尖らせた。
「だってしょうがないじゃなーい。公式には断ったところで、リオードル公が私的に募集して応じたロストナンバーを止めることはできないわ」
「でもこれで、私たちは公の野心に手を貸したことになってしまうのですよ」
「あら。エヴァおばさまは公がナラゴニアの王位につくのに賛成よね?」
「それとこれとは話が違います」
「とにかく。広報は行うわ。これでもし……『流転機関』が手に入ったらそれはそれで儲けものですもの」
* * *
かくして、リオードル率いる、世界図書館のロストナンバーからなる世界樹調査隊という奇妙な部隊が編成されることになったのだった。
世界樹聖域――。かつて、園丁たちだけが立ち入ることを許され、かれらが託宣を得る場所であった、清らかな泉の沸く森のそのまた奥地。そこに、巨大な壁としてそびえる世界樹の幹に、小さな亀裂がある。小さな、といってもそれは巨大な世界樹の全体に比してのことであって、ちょっとした洞窟の入り口程度の大きさだ。ここから、「世界樹の内部」に入ることができるようなのだが、今まで園丁以外にそれを試みる勇気のあるものはいなかった。
正確には、試みたもので戻ったものは一人もいないらしい。ならばリオードルの企てたこの冒険はまさに命知らずと言えた。チャイ=ブレと世界樹は同じではないが、おそらく、内部はチャイ=ブレ同様、侵入した異物に対して友好的ではないだろう。
入り口までは、リオードルの配下も同行し、一団はぞろぞろと移動する。
木漏れ日がやさしく降り注ぐ泉のほとりは、美しい場所だった。
目指す入り口が視界に入ったが、そこに、一団に先んじて大勢の人が集まっているようだ。
ふん、とリオードルが鼻を鳴らす。
「これ以上は決して進ませませんよ、リオードル」
ユリエスだった。
ユリエス以下、翠の侍従団とおぼしきものたち、そして旅団のツーリストたちだろうか。かれらが険しい目で一行をにらんでいた。
「休眠中とはいえ世界樹に対する不敬は絶対に許せません」
ユリエスの言葉に、リオードルは答えなかった。
かわりに、傍らに立つ側近の騎士、ロックへ一言だけ告げた。
「蹴散らせ」
「御意」
ロックがすらりと刀を抜いた。
ご案内
ナラゴニア政府の有力者《人狼公》リオードルからの申し出により、世界図書館のロストナンバーによる「世界樹内部の調査」が行われることになりました。かつて世界園丁に仕えていた侍従長ユリエスたちはこの調査活動に猛反発しているようですが……。
このイベントはフリーシナリオ形式で行われます。
→フリーシナリオとは? フリーシナリオはイベント時などに募集される特別なシナリオです。無料で参加できますが、プレイングは200字までとなり、登場できるかどうかはプレイングの内容次第です。 |
■参加方法
(プレイング受付は終了しました)
■選択肢
【1】翠の侍従団への対応を行う
世界樹内の探索に反対する、ユリエスに率いられた翠の侍従団とその呼びかけで集まったナラゴニア市民の集団がいます。リオードルは配下のツーリストたちにかれらの「排除」を命じました。このままでは死傷者が出ることも考えられ、今後のナラゴニア市政に影響を及ぼします。
この選択肢を選んだ人は、ユリエスたちを説得して下がらせたり、リオードルの配下が暴力をふるうのを止めたりして場が混乱するのを防ぐための行動をとって下さい。
!注意!この選択肢を選んだ人は世界樹内の探索には加わりません。
【2】突入時に調査隊を護衛する
世界樹の内部に足を踏み入れると、チャイ=ブレ体内と同様、世界樹の防衛機構による攻撃があるものと予測されます。この選択肢を選んだ人は、突入時に発生する攻撃から調査隊本隊を守る役割を担います(突入が成功した後は入り口付近に待機します)。どのような攻撃があるかわかりませんので、さまざまな状況への対応ができるような役割分担が大切でしょう。
防衛機構による攻撃は突入する調査隊の規模に比例しますので、選択肢【3】と【4】を選んだ人数の合計より、【2】を選んだ人の数が少ない場合、調査隊は非常に危険にさらされ、調査を行えずに撤退する可能性もあります。
【3】調査を行う
内部での調査を行います。世界樹の内部がどのようになっているのかわかりませんが、存在するものを予測しておけば的確な行動が可能かもしれません。
【4】進路を切り開く
突入が成功した後、本隊(【3】の選択者)が調査活動を行うのに並行して、進路を決め、先行して偵察したりして、部隊全体が効率よく先へ進めるように行動します。選択肢【3】を選んだ人より、【4】を選んだ人の数が多い場合、「深部まで踏み込みすぎる」ことになるかもしれません。
なお、リオードルはこの選択肢を選んだものとして行動しますが、判定の人数には含みません。リオードルになんらかの働きかけを行う場合はこの選択肢を選んで下さい。
【5】撤退に備える
部隊が撤退を余儀なくされた場合のサポートを行います。撤退が安全に行われた場合、この選択肢を選んだ人は描写されませんのでご了承下さい。
突入成功後に緊急の撤退が発生した場合で、選択肢【3】と【4】を選んだ人数の合計より、【5】を選んだ人の数が少ない場合、撤退に失敗して調査隊が全滅する可能性があります。
おしらせ 一二 千志(chtc5161)さんには、このイベントに関連するパーソナルイベントが発生しています。こちらのイベントのプレイングは送信せず、パーソナルイベントにご参加下さい。 |